大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和49年(行コ)88号 判決

東京都西多摩郡羽村町神明台三丁目三三番地一五

控訴人

株式会社 岡田製作所

右代表者代表取締役

岡田広吉

右訴訟代理人弁護士

和田正年

東京都青梅市東青梅四丁目一三番五号

被控訴人

青梅税務署長

水盛五実

右指定代理人

大淵博義

佐々木宏中

野崎悦宏

大久保英夫

右当事者間の役員退職金否認の裁決処分取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四四年一二月二六日付でした控訴人の昭和四三年度分の法人税額の更正決定のうち、役員退職金否認の決定はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、当審において、控訴代理人が控訴人代表者尋問の結果を援用し、乙第六、第七号証の各一、二の成立を認めると陳述し、被控訴代理人が乙第六、第七号証の各一、二を提出した外は、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求は、失当としてこれを棄却すべきものと判断するものであり、その理由は次のとおり付加する外は、原判決の理由と同一であるから、その説示を引用する。

(一)  成立に争いのない乙第六、第七号証の各一、二、当審における控訴人代表者尋問の結果に、弁論の全趣旨をあわせると、小川金蔵は控訴会社の取締役として二七年間勤務し、昭和四七年六月退職した者であるが、同人の退職金は一八〇〇万円であったこと、控訴人の法人税確定申告によれば、小川金蔵の在職中の役員報酬は、昭和四六年一月から同年一二月までが三〇〇万二〇〇〇円(月額約二五万円)であり、同四七年一月から同人が退職した同年六月までが一四三万一五〇〇円(月額約二四万円)となっていること、同人の役員報酬は月額二五万円であったが、退職した六月分としては一五万円が支給されたことが認められる。

そうすると、小川金蔵は控訴会社に二七年間勤務し、支給された退職金は一八〇〇万円であるところ、その適正なる退職金算出の基礎となる報酬月額は二五万円と認められるので、その功績倍率は1800万円÷25万円×27=2.66 となることが明らかである。そして控訴人と同業種同規模の比較法人の適正なる退職金算出の功績倍率は二・三であるところ、被控訴人が岡田ハツの適正退職金と認定した一九〇〇万円は、その功績倍率を三・〇と推定して算出した金額とほぼ同額であることは、原判決の判示するとおりであり、右三・〇の功績倍率は小川金蔵の功績倍率二、六六より高率であるから、小川金蔵が控訴人から退職金として一八〇〇万円の支給を受けた事実があったとしても、このことは原判決の認定を妨げるものではない。

(二)  右本人尋問の結果によると、興和工業株式会社は代表取締役岡田広吉に対し退職金を支給するに際し、所轄税務暑にその退職金が損金として認められるかどうかにつき、書面を提出して照会したことが認められるけれども、これに対し所轄税務署長がその損金性を承認した事実は、右本人尋問の結果だけではこれを認め難い。また政府関係特殊法人や民間大企業の役員の退職金を、中小企業の適正なる退職金算定の基礎とすることは、法人の適正なる退職金算出については、同業種同規模の法人における退職金の支給状況等を参酌し、これを算出すべき旨を定めた法人税法第三六条、同法施行令第七二条の趣旨に違背するものというべきであるから、政府関係特殊法人や民間大企業の役員の退職金が高額であることは、原判決の認定を左右しない。

二  よって控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件訴訟は理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺一雄 裁判官 田畑常彦 裁判官 丹野益男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例